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2026.08.28
ツール

フィジカルAIが家にやってくる。399ドルのアヒル型ロボットが予約開始

画像: Pollen Robotics

AIはずっと画面の中にいた。それが机の上に降りてきて、歩き出す。世界中の開発者がAIモデルを公開し合う場のHugging Faceが、8月27日、25センチのアヒル型ロボット「Microduck」の予約を399ドルで始めた。くちばしで物を拾い、倒れても自分で起き上がり、新しい芸は買った人が仕込める。届くのはクリスマス前だ。これが最初の一羽になるのだろうか。

Microduck

  • 価格と時期:399ドル(税・送料別の導入価格)。予約開始は2026年8月27日、出荷はクリスマス前
  • 体格:高さ25センチ、幅14センチ、重さ800グラム未満、モーター15個
  • 公開の範囲:ソフト一式をApache-2.0でGitHubに公開。機構と電子の設計図は対象外
  • 買える地域:北米と欧州。日本は入っていない

399ドルのMicroduckは何ができるのか

歩く、座って立ち上がる、しゃがむ、蹴る、くちばしで拾う、ローラースケートで進む、倒れた姿勢から自力で起き上がる。この動きが最初から7つ入っている。

机の上に立つMicroduck。頭部にカメラ、脚には関節ごとにモーターが並ぶ
画像: Pollen Robotics

体格は高さ25センチ、幅14センチ、重さは800グラムを切る。関節は脚と頭、首にまたがって15自由度あり、モーターも同じ数だけ入る。くちばしを地面に下ろしてすくい上げる動作では、800グラムまで扱う。

目にあたるのは前方のカメラで、撮影中であることを示すランプが付く。古いビデオカメラの録画ランプにならった作りだという。距離は、8×8のマス目で反射を捉える小型のLiDARで測る。姿勢を測る慣性計測装置は、胴体と頭に1基ずつ。マイクとスピーカーも付き、声は1台ごとに生成される。

頭脳にはRockchipのRK3566を載せ、AI処理用の演算器を内蔵している。RAMは1ギガバイト、ストレージは32ギガバイトを積む。電源はカメラ用のNP-F550電池をそのまま使い、容量2600mAhで、使い方によって1時間ほど動く。機体の中で制御の計算が回る速さは毎秒50回だ。

箱には本体とバッテリー、USB-Cケーブル、ゲームコントローラーが入る。これだけで遊べる。別売りで、充電器と電池を足す39ドルのパック、予備のモーターやNFCタグを含む119ドルの開発者向けパック、レーザーポインターやローラーの入る39ドルのアクセサリーパックが並ぶ。外装の色は4種類から選ぶ。

動きは「ポリシー」として配られる

7つの動きは固定された機能ではなく、それぞれが差し替え可能な学習済みの制御方針だ。Pollen Roboticsの製品ページは、どの動きも自分の機械で学習し直せると書いている。

夕暮れのスケートパークで、ローラーを履いたMicroduckが地面に下ろされる
画像: Pollen Robotics

手順は4段階になる。物理シミュレーターの中で動きを学習させ、実機へ載せ、シミュレーターを調整して学習し直し、できた方針を公開して共有する。学習の計算は手元のパソコンでも、Hugging Faceの計算基盤でも回せる。使うシミュレーターはMuJoCoで、ロボット研究で広く使われているものだ。

公開の範囲ははっきりしている。SDK、シミュレーター、強化学習の学習環境までがGitHubに置かれ、ライセンスはApache-2.0で配られる。機体が動かしているものと、読んで書き換えられるものが同じという構えになる。リポジトリは7月29日に作られ、8月28日時点で381個の星が付いた。

ただし公開されるのはソフトだけだ。プレスキットは、機構と電子の設計ファイルはこの言葉の対象に入らないと明記している。ハードごと自作できる機体ではない。

Hugging Faceがロボットを売るまで

ハードウェアはHugging Faceが自前で始めたものではない。フランス・ボルドーで2016年に元Inriaの研究者が立ち上げたPollen Roboticsが、2025年4月にHugging Faceへ合流し、いまは同社のロボット部門になっている。

ボルドーのPollen Roboticsのチーム
画像: Pollen Robotics

民生向けの機体としては、卓上サイズのReachy Miniに続く2台目にあたる。それ以前に作っていたのは研究機関が導入する人型のReachy 2で、価格の桁がいくつも違った。399ドルという値段は、この系譜の中では最も低い。

まだ決まっていないことも公表している。カメラの解像度と画角、LiDARの測距距離、無線の対応版、SDKが対応する言語、そして対象年齢は確定していないという。

物理世界のAIに値段が付いた

共同創業者でCEOのクレム・デラング氏は、これを強化学習で新しい芸を仕込めるオープンソースのロボットだと紹介し、安価なオープンソースのロボットが物理世界のAIを民主化する時代を歓迎する、と書いた。

屋外でボールを蹴るMicroduck
画像: Pollen Robotics

画面の中で起きたことを思い出すとわかりやすい。モデルを置いて共有し、他人のものを引いてきて手を加える。その回し方が広まった先に、いまのAIの厚みができた。同じ形を金属とプラスチックの上でやろうとしているのがこの機体で、動きは公開され、他人のものを引いてきて学習し直せる。

あいにく日本からはまだ買えない。

399ドルのアヒルが、北米と欧州の家に届きはじめる。クリスマスのころ、家庭の風景はかわっていそうだ。


出典