利用者が「家中の照明を消して」と頼めば、スピーカーが照明を消す。「今日の天気は」と聞けば、会話のできるAIにつなぐ。米TypeSafe AIが9月15日(米国時間)に公開した「Jev」は、こんな使い分けを支えるAIだ。文章を書くかわりに、何をしてほしいのかを判断する。1回の判断にかかる時間は0.1秒前後、費用は1000回で数セント。開発者たちはすでに、メールの仕分けやゲームを動かすプログラムに使いはじめている。
同社を立ち上げたのは、ChatGPTの土台となる研究をOpenAIで担ったディオゴ・アルメイダだ。「AIはとっくにチャットが得意になった。なのに、自動化はどこにあるんだ?」。この問いを4年間抱えてきたと書いている。出した答えは、AIに文章を書かせるのをやめることだった。
家電の例では、Jevは「家中の照明を消して」という言葉を受け取り、あらかじめ用意された選択肢から「家全体」「照明」「消灯」を選ぶ。その答えを受け取ったプログラムが照明を消す。天気の質問なら、チャット型のAIにつないで文章で答える。
同社の開発者は、ゲーム「Doom」を自動で動かすプログラムも作った。このプログラムはJevに画面の状況を毎秒10回判定させ、返ってきた判断でゲームを動かす。費用は1時間で約7ドルだったという。
会社に届く問い合わせの仕分けにも使える。開発者がJevにメールを渡し、「担当は請求、技術、営業のどれか」「急ぎか」「お客はどれくらい怒っているか」と聞く。Jevはあらかじめ用意された選択肢から答えを選び、まとめて返す。その答えに応じて、プログラムがメールを担当者に回せる。
Jevは用意された選択肢から誤った答えを選ぶこともあるため、判断にどれくらい自信があるかを示す数値も、処理を振り分ける目安になる。同社が示す音声での銀行操作の例では、Jevが返した自信度が85%を超えたときだけ、プログラムが送金を実行する。自信度がそれ以下なら利用者に聞き返し、60%を下回れば人間の担当者につなぐ。この線は開発者が決める。
英国のイベント情報サイトNearHereは、投稿された催しを掲載してよいかの判定にJevを使った。50件のテストでは正解率96%で、比較したグーグルのAI「Gemini 3.5 Flash-Lite」の86%を上回った。費用は1000件で0.043ドル、比較したGeminiの約58分の1だった。
別の開発者は、約1万8500通のメールで迷惑メールの判定を試した。この開発者が判定基準を詳しく書くと、迷惑メールの実例を学習させた従来の手法と並ぶ精度が出たという。
自分のソフトにJevを組み込む開発者向けには、登録用の画面が用意されている。Googleアカウントかメールで登録すると、ソフトからJevを呼び出すための認証情報「APIキー」を取得できる。同社は、使える開発者を順次増やしているという。
Jevの名前は、19世紀の経済学者ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズに由来する。蒸気機関の効率が上がると、石炭の消費はかえって増えた。その逆説を見つけた人だ。アルメイダは、AIも判断にかかる費用が下がれば、使い道が大きく増えると見ている。照明を消す、メールを仕分ける、ゲームを動かす。すでに開発者たちは、その使い道を試しはじめている。
出典
- Introducing System One Models & Jev(TypeSafe AI、2026年9月15日)
- Quick start(TypeSafe AI Documentation、2026年9月22日確認)
- Confidence-gated routing(TypeSafe AI Documentation、2026年9月22日確認)
- Smart home assistant demo(TypeSafe AI Documentation、2026年9月22日確認)
- Example use cases(TypeSafe AI Documentation、2026年9月22日確認)
- Models(TypeSafe AI Documentation、2026年9月22日確認)
- Event validation: TypeSafe Jev vs Mistral Small 4 vs Gemini 3.5 Flash-Lite(NearHere、2026年9月16日テスト)
- jev-spam-eval(GitHub、2026年9月22日確認)