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AIに10分「答え」を聞くだけで、自力で粘れなくなる─米英の研究

Photo: Photo: Sanket Mishra / Unsplash

分からない問題があっても、AIに聞けば数秒で答えが返ってくる。その速さに慣れた人から、ある日AIを取り上げたらどうなるのか。米英の大学の研究チームが、それを実験で確かめた。

実験では、ネットで集めた参加者に分数の計算問題を解いてもらった。半分の人は画面の横にChatGPTを開いておき、答えを聞いてもよい。残りの半分はAIなしで解く。最初のうちは、AIを使ってよい人のほうが正確に解いていた。ところが12問を解き終えたところで、研究チームは予告なくAIを画面から外した。最後の3問は、全員が自力で解く。

その3問を正しく解けた割合は、AIなしで解いてきた人が73%、AIを外された人が57%だった。解かずに飛ばした割合は、AIなしの人が11%だったのに対し、AIを外された人は20%。AIを外された人たちがAIと一緒に問題を解いていたのは、10分ほどにすぎない。

研究チームは条件を変えて実験を重ねた。2回目の分数の実験では、AIなしで解く人の画面にも、AIの欄と同じ形の欄を置き、画面の違いをなくした。それでも、AIを外された人の正答率は71%で、AIなしの人の77%を下回った。米国の大学入試(SAT)の読解問題でも結果は同じだった。正答率はAIなしの人が89%、AIを外された人が76%。飛ばした割合は1%と8%だった。3つの実験の参加者は、合わせて1222人にのぼる。

ただ、AIを使った人がみな同じように解けなくなったわけではない。研究チームが分数の実験で、AIをどう使ったかを参加者自身に答えてもらったところ、61%が答えをそのままAIに出させていた。AIを外されたあと正答率が大きく下がり、問題を飛ばすようになったのは、主にこの人たちだった。AIにヒントや説明を求めていた人は、AIなしで解いてきた人と目立った差がなかった。AIを使いはじめる前の時点では、使い方の違う人どうしで解く力に差はなかったという。

研究チームは、AIがすぐに答えを出すことに人が慣れ、自分で考え抜く経験をしなくなるためだとみている。春に論文の初稿を公開して話題を呼び、査読を経た改訂版を、10月上旬に言語モデルを扱う国際学会で発表した。

共著者の一人で、UCバークレーの研究者ブライアン・クリスチャンは、AIが人の考え方をどう変えるかを20年にわたって考えてきた。同大学の10月9日の記事で、クリスチャンは「驚くべき結果だが、多くの人がうすうす感じていたことを裏づけるものでもある。私自身も経験している」と話している。いまのAIはすぐに答えを出すが、家庭教師のように解き方を教えるのをふつうにすることもできる、ともいう。

「これは分数やSATの問題の話ではない。小学生から世界の第一線の専門家まで、人の知識と技能のすべてに起きていることだ」とクリスチャンは話す。

クリスチャン自身は、机にノートを置き、毎日そこに書いている。AIと仕事をする時間が長すぎて研究者としての力が落ちるのではないか、という不安をそれで抑えているという。