2026年9月30日を過ぎると、AIの学習データを作る人手を、アマゾンにまとめて発注できなくなる。写真のどこに車が写っているかを四角で囲み、書き込みが不適切かどうかを見分け、アンケートに答える。こうした細かい作業を世界中の人へ小分けにして発注してきた市場が、Mechanical Turkだ。その市場が閉じると、これまで発注してきた側は、次をどこに求めるのだろうか。
Mechanical Turkは何をする場所だったのか
細かい作業を世界中の働き手へ小分けにして発注する市場だ。データの確認や調べもの、アンケートへの回答、書き込みが不適切かどうかの判定まで、機械より人のほうが確実に片づく仕事を集めていた。
アマゾンのMechanical Turkの案内ページは、この市場を「個人や企業が、自分たちの手順や仕事を、離れた場所にいる働き手へ出しやすくする」仕組みと説明する。仕事は小さく割られ、マイクロタスクと呼ばれる。1件あたりの報酬を決めて出し、終わった分だけ払う。
発注は画面からでもできたし、自社のシステムから自動で出すこともできた。人手を集めて雇い、教え、仕事が減ったら手放す、という手間を省けるところが売りだった。24時間いつでも働き手がいるので、まとまった量の判定を夜のうちに頼める。
AIの学習データは人の手を借りて作られていた
画像に枠を引いて教材を作る作業も、モデルの出した答えを人が確かめる作業も、公式サイトが主な使い道に挙げる。AI開発の費用と時間を減らせる、とアマゾンは宣伝していた。
例に出てくるのは、写真の中の対象を四角で囲む作業だ。機械だけでは判断が揺れ、専門家を何人集めても量が足りない。そこを大勢の人で埋める。学習させたモデルの出力を人が見て直し、また学習に戻す作り方も、公式サイトはあわせて紹介している。
AI研究機関のアレン人工知能研究所で開発部門を率いるマイケル・シュミッツは、公式サイトに載ったコメントで、人が答えを付けたデータがなければ新しい仕組みは作れないと述べている。人には簡単でも機械には難しい質問に答えるための、人なら当たり前に知っていることを機械に覚えさせるデータを、MTurkのようなクラウドソーシングで作ってきたという。
閉鎖の理由をアマゾンは説明していない
告知に書かれているのは、事業や仕組みを定期的に見直しており、その結果として閉鎖を決めた、という2文だけだ。売上にも利用者数にも、AIの普及にも触れていない。
いま使っている働き手(Worker)と発注側(Requester)には、FAQのページを見て準備するよう案内している。移り先の紹介は、告知の中にない。
求人サイトamazon.jobsのMTurkチームページも、9月1日時点ですでに開かない。「探しているページはもうありません」と表示され、求人検索の画面へ流される。採用の窓口も、すでに閉じている。
人に頼む仕事はどこへ行くのか
9月30日まで、MTurkはこれまでどおり動く。発注側も働き手も、その日までに次を決める。
AIの精度が上がっても、出てきた答えを人が確かめる作業まで消えるわけではない。公式サイトが最後まで大きく載せていたのは、書き込みが不適切かどうかの判定、同じデータを見つけて省く作業、調べものといった、機械より人が得意な仕事だった。その仕事をどこが引き受けるかは、まだ見えない。
写真に枠を引いてきた人も、その人たちに仕事を出してきた企業も、9月30日までに次の相手を決めることになる。
出典
- Amazon Mechanical Turk 公式サイトの閉鎖告知 2026年9月1日確認
- amazon.jobs の Mechanical Turk チームページ 2026年9月1日確認