無料で使いつづけているスマホアプリの画面の隅に、「開発を支援する」というリンクが置かれていることがある。押した先で少額を送れば、明日もそのアプリは動く。こうした仕組みに助けられた覚えはないだろうか?
Androidの暗記アプリAnkiDroidは、8月28日からGoogle Playで更新を受け付けてもらえなくなった。引っかかったのは、まさに寄付リンクだった。非課税団体だと証明する書類はGoogleに渡してある。それでも却下となったのは、なぜなのだろうか。
Google Playが問題にしたのは寄付ページへ飛ぶ1本のリンクだった
審査で止まったのはアプリそのものではなく、寄付ページへ利用者を送るリンクだ。Google Playの支払いポリシーは、Playの決済システム以外の支払い手段へ利用者を導くことを禁じている。
最初の通知は7月20日、自動送信のメールとして日本語で届いた。お支払いに関するポリシーに違反しているので、8月3日からインドとロシアのGoogle Playユーザーにだけ公開し、修正しなければ他の国と地域のGoogle Playから削除する、という内容だった。示された直し方は4つある。寄付機能をアプリから削除する、Playのアプリ内課金で寄付を集める、米国の代替の課金システムに登録する、Googleの外部コンテンツリンクプログラムに登録する。
ただしポリシーには例外がある。第3節は、Playの課金システムを「非課税の寄付」には使ってはならないと定めている。裏を返せば、非課税団体への寄付はPlayの外で集めるほかない。AnkiDroid側は自分たちがここに当たると考えて再審査を請求した。それでも8月28日以降は更新そのものが拒否され、解決しなければ9月11日にインドとロシアを除く全世界のGoogle Playから消える。
非課税の決定書を出しても非課税ではないと言われた
AnkiDroidの寄付を預かるOpen Source Collectiveは、米国の税法501(c)(6)にもとづいて連邦所得税を免除された非営利団体だ。寄付ページが乗っている「Open Collective」というサービスとは別物で、Open Source Collectiveはその上でAnkiDroidの寄付を法的に受け取る非営利法人にあたる。IRSの決定書もGoogleに提出したが、返ってきたのは「非課税ではない組織への寄付を利用者にさせている」という判定だった。
Open Source Collectiveは、カリフォルニア州に登録された米国の非営利団体で、法人になっていない開発チームのかわりに寄付を預かり、会計を代行する。7月21日、代表のベンジャミン・ニコルズが確認書を出した。AnkiDroidは当団体のプロジェクトであり、Open Collectiveのページ経由で集まった寄付は当団体が受け取って非課税として扱われる、という内容で、IRSの決定書が添えられていた。決定書の本文には「内国歳入法501(c)(6)にもとづき、連邦所得税を免除されると判断しました」とある。
Googleの8月6日のメールは、寄付を集めてよい相手を「認定された非課税団体(たとえば米国では認定された501(c)(3)の慈善団体、または各国の同等の組織)」と書いていた。決定書を受け取った翌8月7日の返信でも、AnkiDroidが「非課税ではない組織への寄付を利用者にさせている」という判定は変わらなかった。なぜ501(c)(6)では足りないのか、Googleは説明していない。
501(c)(6)でも501(c)(3)でも、団体の側は連邦所得税を免除される。違うのは寄付した側の扱いで、501(c)(6)への寄付は所得控除の対象にならない。Googleのメールが繰り返し使う語は「tax-exempt(非課税)」であって「tax-deductible(控除できる)」ではない。開発チームがGitHubのIssueでGoogleに求めているのは、この一点の説明だけだ。
1000万人が使う暗記アプリから寄付リンクが消える
AnkiDroidには有料版も広告もなく、Open Collectiveに集まる寄付だけが開発と保守の資金だ。9月11日の削除を避けるため、チームは抗議しながらPlay向けのビルドから寄付リンクを外す。
外すのはバージョン2.24.Xからだ。外さなければ、利用者の大半が使うPlayストアにアプリを配れなくなる。読者に頼んだのはこの投稿を広めることだけで、Googleのサポートへ直接連絡しないでほしい、とも書き添えた。
AnkiDroidは医学部の学生や語学の学習者に使われてきた。Open Collectiveの会計は公開されていて、誰がいくら出し、何に使われたかを誰でも追える。名前は似ていても、Anki本体やAnkiWeb、AnkiMobile、AnkiHubとは別の有志が作っていて、アプリの中で売っているものはない。集めた寄付は、その開発と保守にだけ回ってきた。
9月11日が来ても、AnkiDroidの単語カードはこれまでどおりめくれる。ただ、寄付を届けたい人は、Playストアの外にあるOpen Collectiveのページを自分で探すことになる。
出典
- Google Play: no longer allowing our Open Collective donation link(AnkiDroid Issue #21656) 2026年8月29日
- Open Collective: AnkiDroid の公開会計 上記Issueに記載、2026年8月29日